こんにちは!西日本を中心に総合物流サービスを展開するキチナングループの採用担当荒木です。

生産や在庫の拠点がグローバルに広がっている現在、物流が支える役割は重要性を増しています。

貨物量の増加による労働環境の変化や人材不足なども問題となる中、改善策として注目されているのが「中継輸送」です。

今回は物流業界で導入が始まっている「中継輸送」について解説します。

課題やメリット・デメリットに加え、実際の取り組み事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

中継輸送

中継輸送とは?

「中継輸送」は、輸送に際して長距離・長時間にわたる運行が必要な場面で、途中の中継地を利用して他のドライバーと業務を交代する輸送形態のことを指します。

トラック運送業界での厳しい労働環境を改善するための対策として、国土交通省も推奨している方法です。

中継輸送は人材不足解消のカギ

中継輸送が導入される背景には、深刻な人材不足があります。

厚生労働省が行なった令和5(2023)年6月度の有効求人倍率調査によると「自動車運転従事者」の有効求人倍率*は2.53倍。

※有効求人倍率は、倍率が1を上回れば求職者の数よりも人材を探している企業数が多いことを指します。

職業別の倍率では、建築・土木、サービス業などに続いて高い水準です。

積極的に求人をかける理由として、長距離運転や長時間労働などの厳しい労働環境が影響しています。

「中継輸送」は、物流サービスの水準を下げることなく、トラックドライバーの労働環境を改善する対策として期待されおり、「2024年問題」を解決する一つの手段ともいわれています。

2024年問題とは、2024年4月1日、働き方改革関連法の改正によりドライバーの時間外労働時間の上限が「年間960時間」と定められることにより発生するであろう、物流業界でのさまざまな影響や問題のこと。

時間外労働の上限が規制されることで、トラックドライバーの労働環境が改善される一方で、輸送に時間がかかるなど物流サービスの低下が懸念されます。

2024年問題については「物流業界における2024年問題とは?働き方への影響や課題も解説」でも詳しく解説していますので、参考にしてくださいね。

中継輸送の3つの方式

中継輸送は異なる事業者間でも実施できます。

運行管理面など安全に関する規定もある中で、現在のところ、主に以下の3つの方式が採用されています。

  • トレーラー・トラクター方式:牽引されるトレーラーはそのままで、牽引するトラクターを入れ替えて貨物の中継を行う方式
  • 貨物積替え方式:中継地点で貨物を積み替える方式
  • ドライバー交代方式:ドライバーがトラックを乗り換えて交代する方式

中継輸送のメリット・デメリット

中継輸送倉庫

中継輸送を導入する最大のメリットはトラックドライバーの労働環境改善です。

中継輸送を導入することで、長時間の勤務が是正されたり、荷物の積み下ろしなどの負担が軽減されたりすれば、トラックドライバーの確保につながるでしょう。

また、昼間の勤務や短時間の勤務など、多様な労働ニーズに対応できることで、女性をはじめとした異業種からの人材確保も可能になると期待されています。

物流業界での女性の働き方については「物流業界における女性の活躍は?女性が働きやすい職場環境も紹介!」でも解説しています。

ぜひ、参考にしてください!

とはいえ、中継輸送にはデメリットもあります。

採用する方式によって異なるメリット・デメリットについて、見ていきましょう。

トレーラー・トラクター方式の場合

トレーラー・トラクター方式の場合、中継地点でトラクターだけを入れ替える方法なので、作業時間が比較的短く済むことがメリットです。

一方で、牽引免許を持つドライバーが必要となるので、ドライバーが確保しにくいという点でデメリットといえるでしょう。

牽引免許のデメリットを解決するため、最近導入が進められているのがスワップボディコンテナ車両による中継輸送です。

これは、荷台部分だけを積み替えられるように作られたスワップボディコンテナ車両を使って、中継地点でコンテナ部分だけを積み替える方法です。

スワップボディコンテナ車両は牽引免許を必要としないため、ドライバーの人材確保がしやすい点がメリットとなるでしょう。

貨物積替え方式の場合

貨物積替え方式の場合、トラック購入など新たなコストを発生させずに導入できます。

中継地点を確保できれば、運行方法を変更させることで、早期に対応できる点はメリットといえます。

一方、中継地点に荷物積み替えのための労力が必要となる点はデメリットの一つです。

また、積み替えに時間がかかることや、積み替え作業時の破損リスクなどもデメリットとなります。

ドライバー交代方式の場合

ドライバー交代方式の場合、中継地点でドライバーのみが交代する方法なので、導入のハードルが低いことがメリットです。

ですが、現状では多くの運転者が決まった運転車両を運行しているため、運転席の環境が変わることをストレスに感じる可能性があります。

中継輸送が抱える課題

労働環境改善と人材確保に大きな期待がかかる中継輸送ですが、一方で課題もあります。

特に課題となっているのは「中継地点の確保」「ドライバー支援対策」です。

これまでになかったコストがかかるだけでなく、中継地点での時間設定や導線確保、複数の事業者間での調整などが必要となります。

また、中継地点が確保できない場所や地域もあるため、全てのルートで中継輸送ができない事業者もあるでしょう。

また、ドライバーの立場から見ると、労働環境は改善されても、所得が減るというケースも考えられます。

導入には、中継地点や必要車両などハード面と運用ルールや他の事業者との調整、ドライバーや支援スタッフの教育などのソフト面を整備することが必要です。

加えて、中継輸送への投資にかかるコストを上回る、物量の確保も重要になるでしょう。

中継輸送の取り組み事例を紹介

荷積み

ここからは、現在、実際に行われている中継輸送の取り組み事例をご紹介します。

事例①中継輸送「スワップボディ方式」

スワップボディコンテナ車両を使い、千葉ー大阪間の中継輸送を行っている事例です。

中継地点は、静岡県静岡市と愛知県小牧市の2カ所。

異なる業界5社の貨物を、スワップボディコンテナ車両を活用して、中継地点に運ぶことで、千葉ー大阪の500km以上にもなる長距離運行の負担が軽減しました。

中継輸送と同時にDX化にも力を入れ、物流の可視化にも成功。

トラックの位置情報や作業状況が確認でき、道路の渋滞による遅延や中継地点でのトラブルなどに迅速に対応が可能となったことにより、安定的な運用を実現しています。

この取り組みによって、ドライバーの労働時間の短縮と共に、輸送時のトラック台数の削減と輸送効率の向上が実現しています。

事例②中継輸送「トレーラー・トラクター方式」

ルートの途中でトレーラーを交換するトレーラー・トラクター方式で中継輸送を行なっている事例のご紹介です。

関東と中部に拠点を持つ2つの事業者が、それぞれの拠点から静岡県の中継地点まで自社商品を運び入れた後、トレーラーを交換して相手企業に運ぶ中継輸送を行なっています。

この取り組みでは、出発した地域に日帰りで戻れることから、ドライバーの拘束時間の短縮が実現しました。

また、帰りの便にも荷物を積載するため、回送となる車両を削減し、実車率の向上を実現しています。

事例③中継輸送「貨物積替え方式」

製品の入庫と在庫転送を兼ねて、中継輸送を行なっている事例です。

宮城県に製品工場と物流センター、神奈川県に自社の物流センターを持つ事業者が、埼玉県にある協業社の物流センターを中継地点として確保、中継輸送を導入しました。

これにより、宮城県の工場で作られ、神奈川県の自社物流センターに集約されていた製品は、埼玉県の中継地点に入庫され、積み替えてから神奈川県に運ばれます。

その結果、ドライバーの日帰り運行が実現。

貨物の積替えには時間がかかるというデメリットがありますが、荷物をパレット化することにより、荷役作業時間の短縮にも成功しました。

中継輸送とは物流業界の人材不足を解消するカギ!

物流業界において、トラックドライバーは深刻な人材不足が続いています。

追い打ちをかけるように「2024年問題」と呼ばれる、時間外労働の上限規制が始まろうとしています。

2024年に迫った働き方改革関連法により、トラックドライバーの労働環境改善が期待される一方で、人材確保が間に合わず、物流サービスの低下が懸念されるところです。

中継輸送は物流業界の人材不足の解消に向けて、国土交通省でも導入を推奨している取り組みの一つです。

実際に導入している事例からは、ドライバーの拘束時間、労働時間の短縮に成功していることに加え、輸送効率の向上にも効果が見られます。

中継輸送は、時短勤務や定時での勤務など多様な労働ニーズを組み合わせて運行できる可能性もあるため、新規の採用だけでなく、異業種からの転職流入も含めて期待が寄せられています。

この記事を書いた人

荒木 花恋

キチナングループ株式会社 経営企画部

2022年新卒入社。吉南株式会社経営企画部採用担当。 入社後、大型ウイング車の配車を担当。2023年1月より経営企画部に異動、入社して10ヶ月で採用担当として活動中。温泉巡りが好きで山口はもちろん、九州の温泉を巡って癒されています。好きな言葉は、”人事を尽くして天命を待つ”。